ヒーリングは、時代と場所により、代替医療、超能力や霊能力による治療、ファンタジーにおける魔法など、様々に訳されますが、一般に現代の日本においては「癒し」を指します。
「癒し」:心理的な安心感を与えること、それを与える能力を持つ存在の属性をヒーリングと呼びます。
現代のキーワードは間違いなく「癒し」ですが、癒しという言葉は元々、宗教学や宗教人類学で使われていた用語でした。
今のように気軽に日常生活で登場する単語ではなく、未開社会で呪術医による悪魔祓いの行為を癒しと呼んでいたそうです。
呪術医、あるいは魔法医という存在自体、今の日本ではノンフィクションの中でしか登場しない職業ですが、文明社会が確立された現代でも、通常の医学では治療できない難病や奇病・慢性病を治すという触れ込みで、同種業態の活動は世界各国で未だに存在しています。
もちろん、信憑性に関しては随分怪しいものもあり、高額な費用を取って効果がなかったり、半ば観光名所化しているところもあります。
しかし、現代医学では治療が不可能だったケースを見事に治した例もあり、呪術的なヒーリングに関しては研究する人間が後を絶ちません。
呪術や特別な薬草などを使用して、病気や怪我、あるいは社会不安を取り除く民間療法の上での医師=医療行為を行う者が呪術医とカテゴリーされますが、神秘主義の一種であると同時に、民間医療の草分けでもありました。
民族学や文化人類学では、シャーマニズムによるシャーマンドクター(shaman doctor)やウィッチドクター(witch doctor;魔女)とも呼ばれます。
原始社会で呪術医は、悪霊払いといった呪術による霊能力が信じられていて、役職として認められ、一定の社会的地位がありました。
原始社会では、酋長や長老といった、政治的な他の権力とも関連している場合が少なくありません。
文明社会になって、そうした擬似的医療行為がすべて迷信である、と迫害された時期もありましたが、近年の調査結果では、呪術医の使用する薬草には、優れた薬効が認められるケースも出てきています。
例えばアマゾンのクラーレですが、クラーレはそれまで、使用法、原料、作用どころかクラーレ自体が原住民の秘密で、詳しいことはほとんど知られていませんでした。
しかし、長年の探検家などによる研究で、クラーレは神経の伝達を遮断する作用を持つことが判明し、植物学者も成分の解明に努めました。
20世紀になるとクラーレの主成分の分離が試みられ、医療へ応用されるようになり、手術の際、筋弛緩剤として使われたり、ヘキサメトニウム(血圧降下剤)として開発されるようになっています。

